パリのすてきなおじさん

就業時間が終わると家に帰りたい以外の気持ちがない。おっしゃ飲みに行くぞ!という気分になることはほとんどなく、出てもあの店のカレーが食べたいとか、コーヒーが飲みたいとかない限り、チャリンコは全力で家を指す。

飲み屋で知り合ったり、友達ができたりと、楽しい話も聞こえてくるが、それはたまたまそうなったケースだけを取り上げてる場合がほとんどで、大抵は何もなく、ちょっといい気分になるだけだろう。別段店員や客とコミュニケーションを取ろうなんて思わないし、聞こえてくる会話も苦手な内容(ねずみ講の勧誘や愚痴)だと、あまりメシも酒も旨く感じないので、それらに高い確率で遭遇するファミレスも苦手。頑張って立ち飲み屋でおしゃべりを楽しもうと試みたことも数回あるが、表面上の探り合いか、相手が年上なら役職マウンティングか世代マウンティングに終わる。巡り合わせの悪さもあるだろうけど。

天気の話もうまくできないような、世間話苦手マンには世間の声が聞きようがない。もちろん傾聴に徹しすぎてインタビューがどヘタなのもある。けど本当は知りたい。自分の知らない仕事をしていたり、世界を見ている人の生の声が聴きたい。おじさんなら誰だって何かのプロフェッショナルのはずさ。

 

そんなおじさんlessのおじさんであるワタクシは、ちょうどいい本に出会えました。

パリのすてきなおじさん

パリのすてきなおじさん

 

 

おじさんコレクターの筆者と、パリ在住ウン十年のジャーナリストがタッグを組んで出来上がったおじさんインタビュー集。いや絵日記か。

 

フランスには出自や国籍、宗教様々な人がひしめいているが、おじさんには更に人生の積み重ねがあり、人として魅力を増している。

登場する全てのおじさんの立ち位置や収入、生き様は様々。画家のおじさん、フリーメイソンのおじさん、彫金師のおじさん、LGBTセンターのおじさん…

おじさんは、都合のいい解釈を必ず一つは持っている。それが、家と職場往復マンの価値観を少し広げた…ように感じる。 

 

 

もし日本でおじさん探しをするなら、どこが幅広いおじさんを得られるだろうか。東京か、大阪か。東京の方が出自様々なおじさんがいるだろうけど、区によってレイヤーが分断されてるイメージがあるからどうだろうなあ。「月曜から夜更かし」が思いつく。でもあの番組強引にオチ付けるからなあ。

 

パリには行ったことがない。この本を読む前に行くのと、読んでから行くのでは、また違った景色が見えそう。人の過去から歴史が見えて、時の流れがロマンを感じさせたり…。

イラスト、フォントや本の大きさも手に取りやすく、気を抜きたい時にちょうどいい一冊だと思う。喫茶店なんかに置いてあるといい雰囲気でそう。kindleは無し。これは本で持っておいた方がよいと思った。


「人生を学んでいるあいだに手遅れになる。大事なことを後回しにするな。」