ブラッド・メリディアン

「めっちゃ人死ぬで」くらいの前情報しか知らず読み始めた。2年前の記憶なのでややおぼろげ。

ブラッド・メリディアン

ブラッド・メリディアン

 

1845~50年?くらいのアメリカでのおはなし。

西部開拓時代ッ!!!

フロンティア・ラインは俺たち白人にはあってはならないッ!!俺達に拓かれるためにこの大地はあるッ!その価値もわからぬ野蛮な先住民はブチ殺す義務があるッ!マニフェスト・ディスティニー! 

ゴロツキども!インディアンをブチ殺すたびに金をやる…頭の皮を剥いでこい!

 

この時代のアメリカにはドナー隊(グロ注意)やゴールドラッシュ、カリフォルニアが今アツい!!金が出たぜヤッホイみんな集まれ~☆くらいのイメージ映像しかなかったし、インディアンは軍と戦ってたとばかり思っていたので、ならず者どもが跋扈してカネで殺人をやってたことに想像が行き足りず興奮してノンストップで読み進めたのを覚えている。

ページをめくる度に人死んどる。殺され方も野蛮。さっきまで一緒に遊んでいた子供でも、叫び声さえ上げさせず、ただ、人が、人が。。。

いやーめちゃ人死ぬいうてバトル・ロワイヤルくらいっしょ?と思ってたけど、400ページくらいある本の最初から最後までずっと人、死ぬ。敵も味方も皮を剥ぐ。生きたまま焼く。なんか欠損しよる。過去の小説の中でも一番死んでるんじゃないの?

 

『判事』という、デカブツながら知性が高く、演説と踊りが上手で殺しも慣れてる、カリスマに溢れた人物が主人公をインディアン討伐隊に誘い、旅をリードしていく。

隊は想像しうるこの世の地獄を具現していくが、その残酷さと対比するように、自然の描写が圧倒的なのも印象的。人の営みに無関心で、美しい。

お、朝日きれいやん。昇るの見てから先いこーっと(そのあとすぐ殺しが始まる)。

その中で『判事』は段々と敵か味方かわからない挙動を示し始め…

 

うーんあの判事は何なんだろう。国そのものかなと思う。

 

 

映像化不可能(グロすぎるから)だなんて言われてるけど、ウォーキングデッドのシーズン7があんだけ表現規制を飛び越えてやりたい放題やってるんだから、もう出来るのでは?でもアメリカに都合悪すぎる歴史表現は映画になんないかなあ。

 

この本を読んでから、俺の想像力なんてのは、テレビやマンガで見聞きしたのをいつのまにか忘れ、空想するころになって、自分で世界観を拓いたかのように思い込んでいるだけなのだなと思った。本当は借り物の世界を思い出してるだけなのに。

こんなにひどい世界があったんだ。それも現実に。

 

もっと本を読もう。原作を。映像化されたものでないものを。イメージの幅を広げたい。フィクションに。歴史に残されていない人の暮らしに。現代にない常識や考え方に。

…と感じさせてくれ、読書の習慣をつけてくれた一冊でした。